スポーツファーマシストって知ってますか?スポーツ専門の薬剤師にMRがなるには
コロナ禍の中で開催が危ぶまれた東京オリンピック。しかし、多くのシーンにおいて私たちに感動を与えてくれました。
そんな、東京オリンピックを陰で支えていた「スポーツファーマシスト」と呼ばれる人たちの存在をご存知でしょうか?
「スポーツファーマシスト」とは資格の名称であり、薬剤師が取得してオリンピック選手や国際大会などに出場する選手の活動を支える重要な役割を担っている職業なのです。
スポーツに関わりたいという薬剤師に注目されている仕事であり、やりがいを求めて希望するMRも増えているのです。
ここでは、「スポーツファーマシスト」がどのような資格なのか、どのような役割を持っているのかお伝えし、その資格の取得方法やなり方についても詳しくお伝えしていきましょう。
スポーツファーマシストって知ってますか?
「スポーツファーマシスト」とは、プロスポーツ選手やオリンピック選手、国際大会に出場するスポーツ選手、また一般のスポーツ愛好家のために、薬に対する教育や啓発活動を行う専門家です。
アスリートへの対応や多くの人たちへの教育・啓蒙活動が主な役割のスポーツファーマシスト。はたしてどのような職業なのか、その概要をご紹介していきましょう。
スポーツファーマシストとは
スポーツファーマシストとは、アンチ・ドーピングに対して深い知識を持った薬剤師のことを指しています。
ドーピングとは、薬物を活用して運動能力を高めるという行為のことで、スポーツの世界では国際的に不正行為として禁止されています。
近年においては、ドーピングに対する技術も発達し、禁止薬物を意図的に使用して、スポーツの国際大会なので勝利を得ようとする好意が後を絶ちません。
そのため、このようなドーピング行為に対して反対する「アンチ・ドーピング」と呼ばれる教育や啓発活動が盛んになりました。
アンチ・ドーピングの目的として、スポーツの大会がフェアに行われるというだけではなく、禁止薬物の撲滅によってアスリートの健康を保護するという役割もあります。
つまり、スポーツファーマシストに求められているのは、ドーピングをしているアスリートを排除するという活動ではなく、ドーピングを理解してスポーツを守るということが大きな役割になるのです。
特に、普段から何気に服用している薬やサプリメントには禁止成分が含まれているものがあり、ドーピング検査に引っかかってしまうという事例が増えています。
風邪を引いた時に飲んだ薬や、筋肉増強のために活用しているプロテインなどにも禁止成分が含まれていることがあるのです。
スポーツファーマシストにはこのような薬などを服用しないように相談に乗って、適切な指導や教育を行っていく役割があるのです。
さらに地域や教育現場などに対して、医薬品を正しく使うための啓発活動を行っていくと言う活動も期待されています。
わが国では高齢化社会であり、介護予防などのためにスポーツが取り入れられることも多くありますから、スポーツファーマシストのニーズはますます高まっているのです。
スポーツファーマシストを目指す人が増えている
アンチ・ドーピングについては、1999年にWADA(世界アンチ・ドーピング機構)が設立され、我が国においても2001年にJADA(日本アンチ・ドーピング機構)が設立されました。
もともとわが国では、生活の身近なところで薬を活用する人が多いと言えるのではないでしょうか。
特に近年では、インターネットで薬やサプリメントが手軽に購入できるようになり、さらに身近な存在になったように感じます。
ただ、もしその薬やサプリメントが正しく活用できていなくて、何かしら問題やトラブルがあった場合、誰が責任をとることになるのでしょう。
つまり、スポーツの分野だけではなく生活全般において、薬の知識を有する薬剤師への期待が高まっているということが言えるのです。
そのために、アンチ・ドーピングという分野だけではなく、薬の適正使用と言う重要な役割を担うスポーツファーマシストを目指す人が増えています。
ある意味、薬剤師の社会的使命のひとつであるといえるのではないでしょうか。
そのため、薬剤師会はJADA(日本アンチ・ドーピング機構)と連携して「公認スポーツファーマシスト認定制度」を創設したのです。
現在、スポーツファーマシストとして活躍する薬剤師は、2010年度で796名でしたが、2020年度には全国で10,211名が存在すると知られています。
スポーツファーマシストの仕事や期待される役割
スポーツファーマシストは、オリンピックやスポーツの国際大会でのアンチ・ドーピングという役割だけではありません。
スポーツ選手やアスリートに対して、適切な服薬ができるように指導することもその役割として期待されています。
例えば、スポーツ選手が風邪を引いたり、怪我をした場合の服薬、あるいは筋肉を増強させるためにプロテインを使用する場合など、禁止薬物が含まれていないか相談に応じて、適切な指導を行っていきます。
また、地域のスポーツ大会や学校の教育現場などに対しても、教育活動や啓発活動をすることも重要な役割であると考えられています。
そのような場で、アンチ・ドーピング教育を行うことはもちろんのこと、競技団体への指導者に対して教育を行うことや、競技会に帯同することもあります。
スポーツ愛好家に対して、健康を維持促進させるための薬の知識を啓発することも必要であると期待されているのです。
MRがスポーツファーマシストになるには
スポーツファーマシストになるには、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)が主催する、公認スポーツファーマシスト認定制度を受講する必要があります。
薬剤師資格がある場合
公認スポーツファーマシスト認定は、基礎講習を受講する時点で薬剤師の資格を有している必要があります。
スポーツファーマシストとして認定されるためには、「基礎講習会」「実務講習」の2種類の講習を受講しなければなりません。
講習を受講後には、知識到達度確認試験が行われ、合格した受験者には公認スポーツファーマシストの認定証が発行されます。
公認スポーツファーマシスト認定プログラムを受講するための受講料として7,600円が必要であり、認定料として21,000円支払う必要があります(4年間有効)。
また資格を維持するために、毎年定められた実務講習( e-ラーニング)を受講しなければなりません。
さらに、有効期限延長の4年目には、基礎講習および実務講習(ともにe-ラーニング)を受講して認定更新を行います。
薬剤師資格がない場合
スポーツファーマシストには興味あるものの薬剤師の資格がないという方であれば、まずは薬剤師の取得から始めなければなりません。
特に、MRは薬剤の知識に長けているために、薬剤師は向いている職業であると言えます。
そのため幅広い分野で活躍できるスポーツファーマシストに憧れていると言うことであれば、薬剤師を目指すことも業務の幅を広げる上でとても役立つのではないでしょうか。
薬剤師になるには、薬剤師国家試験を受験して資格を取得します。
受験資格を得るためには、 薬学系や薬科大学に入学して、6年の薬剤師養成課程を修了しなければなりません。
詳しくはこちらに記載してありますのでご覧ください。
また過去記事「薬剤師になる方法って知ってますか?未経験・ブランクあり・無資格MRが薬剤師になるには」にも詳しく記載していますので、気になる方はぜひご覧ください。
まとめ
ここでは「スポーツファーマシスト」についてご紹介しました。
薬剤師に求められている新しい業務であり、アンチ・ドーピングを目的とした役割を期待されています。
意図的なドーピングを防止するだけではなく、薬剤に含まれている禁止成分が含まれている薬剤についても教育や情報提供を行います。
また、地域のスポーツ愛好家や教育現場での部活の指導者や生徒などに対しても、正しい薬の知識を持ってもらうための啓発活動を行い、健康を守っていきます。
やりがいがある業務であるとして、その資格を取得する薬剤師はどんどん増えています。
気になる方は、ぜひスポーツファーマシストを目指してはいかがでしょうか。
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